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EditNetプリンテックと風力発電

風力発電による電力調達

EditNetプリンテックを含むEditNet株式会社では,2003年度から電力の100%を風力発電・バイオマス発電によるグリーン電力で調達しています.

長期契約(50000kWh/年)の風力と,年によって不足分を補うバイオマスの組み合わせで調達していましたが,節電に取り組んだ2011年以降は,風力だけで足りるようになりました.

グリーン電力証書のしくみ

グリーン電力証書

弊社では,風力発電の電力を「グリーン電力証書」というしくみで調達しています.

電力そのものは東京電力パワーグリッドの送電ネットワークを通じて電力会社(東京電力エナジーパートナー,東京ガスなど)から購入しますが,「風力発電の電力である」という発電実績を「グリーン電力証書」の形で購入しています.弊社では証書を日本自然エネルギー株式会社から購入していますが,これも競争市場であり,いくつかの会社から証書を購入することができます.

自然を活用する発電方法は地理的な条件に大きく左右され,東京は一般的に風力発電には不向きです.そもそも電気の需要家が自分で発電設備を持つのは不経済です.

このため,グリーン電力の産地の発電所に発電を委託し,グリーン電力を購入してくることにより,電力を選べるしくみが考えられました.

電気は1組の送電線を道路のように共用できるため,いずれにしても一般の電力とグリーン電力は系統で混ざり合います.これを物理的に分ける必要もないことから,「電気そのもの」と「環境に配慮した電力という付加価値」を切り離し,発電実績(発電量)を適切に管理して証書の形で取引をするのが「グリーン電力証書」の基本的なしくみです.

つまり,風力やバイオマスなどの発電所は,発電した分だけの発電実績を証書の形で販売でき,証書の購入者がその量の分だけグリーン電力の消費者であると考えることになります.

証書の取引は電力と完全に切り離されているため,例えば年間の電力消費量の20%分だけを購入する,イベント会場で使った電力1日分だけを購入する,このような使い方も柔軟にできます.

グリーン電力が普及することは多くの人の願いではありますが,一般に発電コストも割高です.そこで,環境価値を見出す企業や個人に割高な値段で売却するか,政策的なしくみで電力会社に買い取りを義務付けるなど,何らかの方法で誰かが負担する必要があります.

弊社は主に東北地方の風力発電所の発電実績を「グリーン電力証書」の形で購入し(1kWh何円という契約です),それとは別に電力そのものを東京電力エナジーパートナーなどの電力会社から購入しています.風力発電所は電気そのものを東北電力の送電ネットワークを通じて電力会社に売電し,発電実績については証書を売却することで,風力発電事業を成り立たせています.

いずれにせよ,グリーン電力の環境価値を健全に取引するためには,二重譲渡などの問題が生じないよう,発電実績の実績の管理がきわめて重要になります.グリーン電力証書は,発行元と別に認証機関であるグリーンエネルギー認証センターが発電実績の認証を行っています.

環境ラベルの表示

図 環境ラベルの表示例

弊社では,グリーン電力証書の発行元との契約に基づき,弊社の印刷物にグリーン電力のラベルを表示しています.

お客さまの印刷物にも,上記のような形でグリーン電力の表示を行っていただくことが可能です.(詳細はお客さまセンタまでお問い合わせください.)

電力を選べる社会へ

野菜の生産方法や生産者を選んで購入できるように,電力も発電方法や産地を選んで購入できれば,グリーン電力の拡大につなげられるかもしれません.

しかし,電力は形のあるものではないため,送電線の向こう側には意識が向いてきませんでした.

日本では2000年前後からグリーン電力証書のしくみにより,当初は大企業向けに証書の取引が始まりました.例えばソニーが銀座のビル1棟をグリーン電力でまかなったり,アサヒビールはスーパードライの一部をグリーン電力で製造しています.

その後証書の小口化が進み,弊社は2003年度からグリーン電力証書を利用するようになりました.それから10年以上が経ち,現在では個人でもいくつかの会社から購入することができるようになっています.

海外のいくつかの国では電力会社が消費者向けに発電方法を選べるしくみを導入するなどの例があります.

FIT(固定価格買取制度)との違い

2011年以降,特に家庭用太陽光発電の急速な普及により,グリーン電力のFIT(固定価格買取制度)と,それに伴う一般消費者や企業への「再エネ賦課金」が話題に取り上げられることが多くなりました.グリーン電力証書とは別のしくみのため,ここで違いをみることにします.

一般家庭の場合,「再エネ賦課金」として2016年度で1kWhあたり2.25円,家族構成などにもよりますが月額600円程度を電気料金と一緒に負担しています.

太陽光発電,風力発電などは現時点で発電コストが割高なため,消費者から再エネ賦課金を集め,それを原資に固定価格買取制度によりグリーン電力を買い取るものです.

このしくみは政策によるものであり,買取価格や賦課金の額も法令で定められます.国民が広く浅く負担して国全体のグリーン電力の普及を促すものですが,各人が電力を選ぶしくみとはいえません.

一方グリーン電力証書は,政策ではなく市場原理に委ねるしくみで価格や取引条件が決まります.また,参加がもちろん自由ですので,グリーン電力を選びたい人が,好きな種類や発電所の証書を購入することができるしくみです.

固定価格買取の優遇単価には環境の付加価値が含まれるため,固定価格買取で売電している発電所は,もはやグリーン電力証書を出すことはできません.政策による制度に頼らずグリーン電力を選びたい人の負担で実現するのが,グリーン電力証書のしくみです.

政策によるFITとグリーン電力証書は,グリーン電力の普及という方向性は同じでも,「電力を選ぶしくみ」という点において,違うしくみになっています.

電力自由化との関係

2016年4月に電力小売りが自由化され,低圧で供給を受ける一般家庭などでも,電力の供給元を自由に選ぶことができるようになりました.

これにより,消費者は電力の価格,発電時の環境への配慮などを考えて電力会社を選ぶことができます.

グリーン電力と電力自由化の関係では,新電力の中には電力とグリーン電力の発電実績(典型的には証書)をセット販売することで,グリーン電力を販売する電力会社が出てくるかもしれません.

電力をグリーン電力として販売するためには発電実績の管理がきわめて重要であり,認証制度が重要な役割を果たすため,結局のところ証書方式が一番管理しやすいと考えられます.実際,先行して自由化された大口の需要家も,グリーン電力証書を利用して発電実績を購入しています.

なお,電力各社が電源構成に計上している「FIT電力」は,発電の時点で太陽光や風力などの方式で発電されていますが,電力として流通する時点で国民(電力の消費者)が広く浅く負担する「再エネ賦課金」で購入しているため,FIT電力を購入することでグリーン電力を消費したと考えることは困難です.このため,経済産業省ではFIT電力をグリーン電力と表示して販売することは不適切との考え方を示しており,それに沿って各社とも「FIT電力は再生可能エネルギの普及のために国民全体で負担した賦課金で購入した電力であり,特別な環境付加価値を有していない」のような注意書きをしています.(グリーン電力としての実績は,再エネ賦課金を負担した消費者(国民全体)に帰属すると考えるべきでしょう.)

グリーン電力を家庭で使いたい場合,電力そのものと証書(環境付加価値)はそれぞれ別々の競争市場が成り立っていますので,それぞれ条件のよい会社から購入するのも一案と思われます.